東京高等裁判所 昭和26年(う)4604号 判決
原判決判示事実はその挙示する証拠により優にこれを認めることができ、また訴訟記録により窮いえられる本件犯罪の罪質、態様その他諸般の情状に照らすと原判決が判示犯罪事件につき被告人に対し罰金一万五千円に処する言渡をしたことは洵に相当であつて所論の事由をもつてしても右罰金刑の執行を猶予すべき情状があるものとも認められない。また所論容器、器具類も判示犯罪事実が認められる以上原審が相当法条を適用して右本刑に附加して没収したことも何等不当ではない、尤も原判決は右没収に関する法条の適用において酒税法第六十条第三項を挙げておるが右酒税法第六十条第三項は没収に関する規定ではないのであるから右は次項の同条第四項の誤記であると推認せられる。然し原判決にはなお右法条の次に刑法第十九条を併記しておるから原審は右物件の没収には酒税法第六十条第四項のほかになお刑法第十九条が必要であるとしたものと思われるが没収に関する酒税法第六十条第四項の規定は刑法第十九条に対する特別法規で酒税法の右条項に該当する物件は同条項により何人の所有たるを問わず必要的に没収すべきものであつて、没収が任意的で且つその物件が原則として犯人以外の者に属せないことを要件としておる刑法第十九条の規定に優先して適用せらるべきものであるから右特別法を適用した以上もはや刑法第十九条を適用すべき余地がない筋合である。
従つて原審が本件没収につき刑法第十九条を記載したことは誤りであるが、原判決は既に右特別法たる酒税法の当該条項を適用して没収の理由を明らかにしたものと認むべきであること前段叙説のとおりであるから原審がなおその上に刑法第十九条を附記したことは誤つて無用の字句を併記したに過ぎず而もこの過誤は判決に影響を及ぼすものと認められないから原判決の量刑不当を主張する論旨は結局理由がないからこれを容認することはできない。